wafuwafu雑記帳

気になったことを気ままに書き連ねていきます。

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2015年07月

 最終回は「プロバイダーによる規制」です。まずは条文を見てみましょう。


(インターネットの利用に係る事業者の努力)
第十六条の三  インターネットを利用した不特定の者に対する情報の発信又はその情報の閲覧等のために必要な電気通信役務(電気通信事業法 (昭和五十九年法律第八十六号)第二条第三号 に規定する電気通信役務をいう。)を提供する事業者は、児童ポルノの所持、提供等の行為による被害がインターネットを通じて容易に拡大し、これにより一旦国内外に児童ポルノが拡散した場合においてはその廃棄、削除等による児童の権利回復は著しく困難になることに鑑み、捜査機関への協力、当該事業者が有する管理権限に基づき児童ポルノに係る情報の送信を防止する措置その他インターネットを利用したこれらの行為の防止に資するための措置を講ずるよう努めるものとする。 


  これは俗にいう「努力義務」というやつですね。別にやらなくてもいいということでもあります。さて、実はこの第十六条の三の文言は警察学論集によれば「プロバイダー、掲示板の管理者、サーバーの管理者」が行うべきものであるというのです。なのにもかかわらずこの記事の題名は「プロバイダーによる規制」です。一体どうして、でしょうか。
 それは附則にヒントがあるのです。


(検討)
第三条  政府は、インターネットを利用した児童ポルノに係る情報の閲覧等を制限するための措置(次項において「インターネットによる閲覧の制限」という。)に関する技術の開発の促進について、十分な配慮をするものとする。
2  インターネットによる閲覧の制限については、この法律の施行後三年を目途として、前項に規定する技術の開発の状況等を勘案しつつ検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。 


 そうなんです、2015年施行の本法ですが、その三年後、つまり2018年には「法的義務の生じるブロッキング」が行われる可能性があるのです。もちろんそれは国主体というよりかはプロバイダーに義務を課すことで行われるでしょう(速度的問題、通信の秘密により)。つまりは2018年にはプロバイダーによってブロッキングが「法的義務」という盾をもって行われる可能性があるのです。

 とはいいましても、すでに 一般社団法人インターネットコンテンツセーフティ協会、略称ICSAに加盟しているプロバイダーは独自の共有ブラックリストを使用し、児童ポルノを遮断しています(言ってはなんですが、正直これはいい出来ではないようです。販売サイトばかり遮断されているという話もあり、現在でもダウンロードリンクを紹介しているようなサイトは遮断されていないようです)。さらにそのICSAは児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体として指定されており、法改正が行われた場合この団体のリストを使用するということが考えられます。つまり2018年になってもし法改正等が行われても、「実状」のそこまでの変化はないと考えていいでしょう。

 ですがみなさんご存知「通信の秘密」を犯していないか、という話がブロッキングにはつきものです。現時点で実施されているブロッキングについては、 安心ネットづくり促進協議会曰く「緊急避難」として実行しているとのことです。確かに法的義務はありませんから正当行為とは言いがたいものですが、それを被害の拡大を防止するための「緊急避難」として扱うことで問題化を避けようという考えは非常に面白いものです。そしてこれは一応「問題ない」行為でもあります。それが2018年以降に「正当行為」として認められる可能性があるのです。通信の秘密は侵害しても、それ以上の成果がある、ということでしょう。

 ですがここでポイントが一つ。現在使用されているブロッキングの手法はDNSポイズニングといい、「確実にアクセスを遮断する」ものではありません。警視庁もそれを理解しており、2010年の時点で「これでは不十分」との意見を出しています。しかしこれ以上高度な方式となると、導入コストが嵩み、結果として導入できない企業が続出する可能性があるのです。かといって他の手法も確実性をもってアクセスを遮断することができません。つまりは法改正があってもこの方式のままである可能性があります。

 今回で児童ポルノ法改正に関する考察は終わりです。皆さんの知識に貢献できれば、幸いです。


【資料】
『警察学論集』第67巻第10号 97~133頁 


 第一回、第二回と続いてきましたが、実際「ああなるほどね」程度の内容ではなかったでしょうか。しかし今回取り上げるものは大きな改正です。今回の題名の通り「盗撮も児童ポルノ製造に」です。
 そう、盗撮も児童ポルノ製造になったのです。まずは条文を見てみましょう。

 (児童ポルノの所持、提供等) 
第七条 1~4(略)
5 前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造したものも、第二条と同様とする。
6~8(略)

 これを見てみると「あれ?これ…」と思う方も出てくるでしょう。それは前回記事(児童ポルノ法改正に関する考察(2)「どこまでが単純所持?」)でも紹介しております、第九条の適用です。第九条では第七条第一項以外の第七条各項は対象となっていますので、この盗撮による製造も「児童だとは知らなかった」という言い訳が全くもって通じない、ということに注意が必要です。

 さて、なぜこのような文言が新設されたかというと、従来の法律ではこの「盗撮」による児童ポルノの製造は規制されていなかったのです。ちょっと長いですが「法曹時報」第66巻第11号を見てみます。


 本法には、これまで、児童ポルノの製造について、不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列する目的での製造行為を処罰する規定のほかにも、特定かつ少数の者に対して提供する目的での製造行為を処罰する規定(いわゆる提供目的製造罪)と、児童に第2条第3項各号の姿態をとらせてこれを写真等に描写することによる製造行為を処罰する規定(いわゆる「姿態をとらせ」製造罪)が置かれていた。
 しかし、これらの行為以外でも、盗撮により児童ポルノを製造する行為は、通常の生活の中で誰もが被害児童になり得ることや、発覚しにくい方法で行っている点で巧妙であることなど、その行為態様の点において違法性が高く、このような悪質な態様により児童ポルノを製造する行為は、当該児童の尊厳を害する行為であるとともに、児童を性的虐待の対象とする風潮が助長され、抽象的一般的な児童の人格権を害する行為にほかならず、流通の危険性を創出する点でも非難に値する。


 つまり今までは「児童に姿態をとらせ」、それを撮影することによって初めて製造と見なされてきたわけですが、それが今回第二条第三項三号にある「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」という部分を「ひそかに」「写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写すること」で、処罰の対象となることになったのです。つまりは「児童に姿態をとらせ」なくとも罪に問われることになったわけです。
 ですが「ひそかに」という部分の解釈をしなければなりません。先程と同じく「法曹時報」には以下の様な解釈であると述べられています。


 「ひそかに」とは「描写の対象となる児童に知られることのないような態様で」という意味であり、児童が利用する脱衣所に隠しカメラを設置して盗撮するような場合が典型例である。
 この要件は、児童を描写する行為の容観的態様についての要件であって、児童の承諾の有無を問題とする要件ではなく、また、当該児童が当該描写を認識しているか否かも問わない。


 つまり児童の承諾があろうがなかろうが、処罰の対象となるわけです。例に挙げられている脱衣所に隠しカメラを設置するものなどは第二条第三項三号に該当しますから、第七条第五項の適用はあるわけです。

 さて、ここでまた「あれ?」と思う方がいるはずです。そう、一般にいう「盗撮」、つまりは中学生及び高校生のスカート内を盗撮するような行為についてはどうなんだ、ということです。これは第七条第五項の適用が難しいのです。というのは、この行為は第二条第三項三号にある「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」に該当しないのです。そう、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」ではないわけですから。つまりこのような行為は今までどおり迷惑防止条例違反の扱いになるでしょう。しかし、プールや海で遊んでいる児童を盗撮した場合、児童は水着を着用してはいますが、第二条第三項三号には該当する可能性があります。「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」、もっといえば「衣服の一部を着けない児童の姿態」であると判断される可能性があるのです。しかしこれをやってしまいますと様々な問題を引き起こしかねませんので、実際の所はこれも迷惑防止条例違反なのではないでしょうか。
 つまり現実的に第七条第五項が適用されるのは風呂・脱衣所等の更衣室・トイレといった場所に限定されると考えても良さそうです。その要件として「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」があるわけです。

 さて今回は「盗撮も児童ポルノ製造に」ということを見てきました。なんだかんだ皆さんが思い描いていたものとは異なった内容ではなかったでしょうか?
 次回は最終回「プロバイダーによる規制」です。


【資料】
『警察学論集』第67巻第10号 97~133頁 
『法曹時報』第66巻第11号 29~93頁


 第二回目は「どこまでが単純所持?」です。これはかなーり気になっている方も多いのではないでしょうか。なお、対象となるであろうものに関しての考察は前回記事児童ポルノ法改正に関する考察(1)「どこまでが児童ポルノ?」にあります。
 さて、まずは条文を見てみましょう。これが今回最重要とも言えるポイントです。


 (児童ポルノ所持、提供等)
第七条 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至ったものであり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二章第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて所持するに至ったものであり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。


 なお、所持と保管については以下の分類であることも理解しておきたいですね。以下は「法令解説資料総覧」393号です。


 「所持」及び保管
 「所持」とは、写真、DVD・ハードディスク(記録媒体)などの有体物である児童ポルノを自己の事実上の支配下に置くことをいう。
 一方、「保管」とは、児童ポルノに係る電磁的記録を自己の実効支配下に置いておくことをいう。具体的には、当該電磁的記録をコンピュータのレンタル・サーバに保存したり、自己が自由にダウンロードすることができるリモート(プロバイダのメールボックスに入れられたメールを閲覧できる機能)の記録媒体に保存する行為がこれに当たる。なお、自己の所持するパソコンのハードディスクに保存している場合は、ハードディスクという有体物の「所持」に該当する。


 キーポイントは「自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者」という部分ですね。つまりは明らかに自分の意志によって、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持又は保管し長期的に保持した者が第七条に該当すると考えられるわけであります。そしてその所持・保管において一部で飛び交っている「オンラインストレージなら安全」という噂は根も葉もないものであり、本法上の「保管」にあたります。なお、この場合サーバー管理者はユーザーが何を保存しているか感知できない(規約上)ため、処罰の対象とはならないでしょう。

※追記
独立的判決である「平成26年(わ)第127号」「平成26年(わ)第166号」を見ればちょっとは分かるかもしれません。まあこれ条例違反も含まれてるのでアレですが。

さて、このような処罰の対象外というのはどういったものなのでしょうか。「法令解説資料総覧」を覗いてみましょう。


 「自己の性的好奇心を満たす目的」
 これは、一口に単純所持といっても、嫌がらせなどによりメールで送りつけられた場合、ネットサーフィンによる意図しないアクセスによる場合、パソコンがウィルスに感染し、勝手に児童ポルノをダウンロードした場合、インターネット上の掲示板に児童ポルノが掲載された場合における掲示板の管理者やサーバーの管理者の場合などの事例も想定されることから、これらの場合を処罰対象外とし、処罰範囲を合理的に限定するために加えられた要件である。 


 要は明らかに自分の意志によって児童ポルノを所持・保管しない限りは問題ないわけです。もちろん裏を返せば「嫌がらせなどによりメールで送りつけられた場合」に、それを「児童ポルノが存在することを知りながら意図的にそれを保管した場合」は処罰の対象となりますし、掲示板の管理者やサーバーの管理者においても「児童ポルノが存在することを知りながら意図的にそれを放置した場合」は処罰の対象となるでしょう(これは単純所持ではないですが…)。ですから「それらしきものを発見したらすぐに削除を行う」ことが理想的です。なお、この削除を行う手順において見解が多々あるようですが、警察学論集を見る限り通常の削除で問題ないようですので、特殊な削除を行う必要はないと考えても良いでしょう。
 さて、上記の例はちょっと「浅い」ので、もうちょっと深く掘り下げている警察学論集を見てみます。


<当該行為のみをもって「自己の利用に向けた」と評価し得る事例>
①送りつけられたメールの児童ポルノ画像の添付ファイルをプリントアウトしたものをファイリングしてしょこにおいていた場合
② 送りつけられたメールの児童ポルノ画像の添付ファイルを受信フォルダに入れたままにしていたが、当該添付ファイルを繰り返し閲覧していた場合
③送りつけられた児童ポルノ本を貸倉庫を借りて預けた場合

<当該行為のみをもって「自己の利用に向けた」と評価し得るか微妙な事例>
①送りつけられたメールの児童ポルノ画像の添付ファイルをPCのフォルダ・USB等に入れて保存した場合(例えば、他のポルノ画像が入ったフォルダ・USBに入れた場合は自己の利用に向けた行為と言えるであろうし、削除の趣旨でゴミ箱フォルダに入れた場合には、それのみでは自己の利用に向けた行為とは言えないであろう。)
②送りつけられた児童ポルノ本を開封して自宅に保管した事例(例えば、他のポルノ本と並べてよく使う本棚に保管をした場合には自己の利用に向けた行為と言えるであろうし、いずれ廃棄予定の不要な雑誌等を平積みにしている場所に一緒に保管した場合などは、それにみでは自己の利用に向けた行為とは言えないであろう。)

<当該行為のみでは「自己の利用に向けた」と評価し得ない事例>
①送りつけられたメールの児童ポルノ画像の添付ファイルを開いたが、その後削除せずにPC内にデータとして残っていた場合
②送りつけられたメールがメールソフトの自動ソート機能でPC内に保存された場合
③送りつけられた封筒を開封して児童ポルノ本と確認したが、そのまま自宅内で放置していた場合


 これらを見れば分かるように、 意図的に所持・保管さえしなければ問題無いという解釈です。もちろんここに挙げたものは一例に過ぎませんのでご注意を。
 しかしながら、上記の例は「自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した」と解釈されてもおかしくない状態であるものもあります。自分が児童ポルノを所持・保管している可能性がある、と認識した場合早急な当該ファイルまたは有体物の削除又は廃棄が必須とも言えるでしょう。

 さて、最後に皆さんが「まあまあ」気になっているであろう事例の解釈をしておきましょう。それは「ポルノ画像が多数保管されているフォルダにおいて、その中に児童ポルノが紛れている場合」です。警察学論集によれば「自己の性的好奇心を満たす目的」とは、「所持の目的については、所持の様態、分量、所持している対象の内容等の客観的事情からの推認により立証されるもの」であるとしていることから、上記の例は二つのパターンに分類することが出来ます。なお前提条件として、数百枚のポルノ画像の中に数枚児童ポルノが紛れていることとします。

① ポルノ画像が多数保管されているフォルダにおいて、その中に児童ポルノが紛れている可能性を認識し、事実紛れているがそれを削除しない場合
② ポルノ画像が多数保管されているフォルダにおいて、その中に児童ポルノが紛れている可能性を一切認識せず、実際には児童ポルノがフォルダに存在してはいるもののその存在を認識していないため削除しない場合

 ①においては処罰の対象となる可能性があります。この記事内で述べてきたように「意図的な所持・保管」は処罰対象となります。この場合、自己の性的好奇心を満たす目的において保管をしており、かつ児童ポルノが紛れている可能性を認識しているため、「意図的な」という要件に該当する可能性があります。
 ②はまず、本法の第九条を見てみましょう。


 (児童の年齢の知情)
第九条  児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条、第六条、第七条第二項から第八項まで及び前条の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。


 ②は、「意図的な所持・保管」 をしておらず、処罰の対象とはならないように見えます。第九条の適用において単純所持を対象とする第七条第一項が除外されていることから、「児童ポルノを所持しているという認識がなかった」場合は処罰の対象とはならないでしょう。

※追記
「過失」についてですが、現在は「予見可能性を前提に行為者に課される行為義務の違反」であると言われています。つまりここでは、「児童ポルノを所持していないかを確認」し、「明らかに児童ポルノと判別がつくもの」を所持していなければ罪に問われる可能性は低くなるでしょう。逆に言えば現在インターネット上に溢れている「vine」等での児童ポルノに対してこの論理は通用しないことになります。 

 さて、ここまで「どこまでが単純所持?」ということを見てきましたが、理解していただけましたでしょうか。なお、私は別に司法試験に通ったとかそういう類の人間ではありませんので、個々の事例についての判断はできません。 というかこの記事は正確な資料を元に解釈していますが、それが間違っている可能性すら有ります。この記事は参考程度にお願いします。


【資料】
『警察学論集』第67巻第10号 97~133頁
『法令解説資料総覧』393号 29~36頁
『法律学小辞典』第四版 「過失」 115~116頁




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